新老楼快悔 第121話 一富士、二関所、三地震

新老楼快悔 第121話 一富士、二関所、三地震


 今年の正月は思いもかけない「豪華旅行」。しかもいささか「危険」も同居したりして、忘れられない旅行になった。
 東京に住む息子夫妻と娘夫妻に招かれて、大晦日の朝、新千歳空港から羽田へ。娘夫妻に迎えられて、夫の運転する車で一路、箱根へ向かう。目的地まで三時間の距離だが、嬉しいことに立派に成人した孫兄弟が、別の車で離れて走っていて、時々両親と交信する。
 その会話をそばで聞きながら、走りに走って箱根の宿舎へ到着した。この宿舎、娘の夫の勤務先のいわば別荘で、閑静な部屋にくつろぐ。夜食は大晦日というので、特別に立派なお膳が並び、美食と好酒にどっぷり酔いしれた。
 それにしても孫たちの食べっぷりには驚かされた。何種類出たのか数えきれないほどの料理を、すべてきれいに平らげた。私以外の者も全員“完食”したので言うことなし。
 食後はなんと麻雀会。何でも弟の方の孫は、この道を極めるほどの達人、というので、久々に牌を握ってみたが、とてもとても、相手にもならず完敗。かつての強者も、いまや地に落ちにけりかな、って感じで、平伏した。
 翌日は元日。またも豪華な朝食を頂いて、出発。芦ノ湖を左手に見て湖畔を走ると、ほどなく有名な箱根関所に着いた。道を塞ぐ形で関所が置かれていて、いかにも険しい雰囲気だ。関所でもっとも厳しかったのが女性の取り調べ。女性の移動はご法度という掟があった歴史を振り返りながら、時代の持つ凄さを思い返していた。
 曲がりくねった道を走る車から、朝日を浴びて輝く富士山が様々な角度で迫ってくる。何か夢でも見ているような気持ちだ。たっぷり走って都内に入り、真っ直ぐホテルへ。
 翌日は代々木の息子宅へ赴き、昼過ぎから孫たち四人も勢揃いして新年会。老妻が用意した「ほうびき」という古い遊びが思わぬ人気を呼び、全員が笑い転げる場面まで出た。それなのに――。
 突然、テレビが悲報を伝えた。石川県能登を襲った大地震と羽田空港で起こった飛行機の衝突事故だ。正月気分が一変した。3日に帰るチケットを持っているが、飛行機は果して飛ぶのか。娘一家の心配をよそに、当日、息子夫妻が飛行場まで送ってくれて、予定より四時間も遅れて出発。夜遅くわが家へ無事に帰着した。
 帰ってみたら年賀状の山。年々減っているとはいえ相当の量だ。翌朝、賀状書き。すでに予兆が見えるが、今年こそ戦いのない、災害のない年にと、筆に願いの力をこめた。




2024年1月6日


老楼快悔トップページ
柏艪舎トップページ